【特別寄稿第3弾】J/24世界選手権大会出場記録①

honest152006-02-02

「狂気」から「狂喜!」へ

その1本の電話で全てが始まった。
ゆっくり時間を掛けて判断する癖のある自分にしては全く別人の如く、「行くべきだ!」と弊社中部ヨット部K部長へ即答。当然、その瞬間に自分もその船に乗っている光景を思い浮かべていた。
それから船出するまでが荒波・強風の連続。


そもそサラリーマンチームがJ24と言えども、世界選手権に参加しようなどと考える事が「狂気」の沙汰なのではないか、と日本出発の時点はおろか、ピアから見送っている瞬間まで思いにさいなまれていた。
まず、参加できるメンバーはどれだけいるのか?行きたいメンバーはいても、仕事の関係で不可と言うものがいるはず?
行ってもらわなければ船が動かないコアメンバーが果たしていけるのか?
船はどうするのか、日本からの他チームはコンテナに愛艇を入れ送り込むとの事、200万円以上は掛かるらしい。当然パトロン無しの我々貧乏チームには無理な話である。
現地でレンタルする以外に無いが、果たしてどんな程度でシステム・艤装はどうか?
そもそも一人当たり幾ら掛かり、若い社員にその支出は可能か?
そもそも、大前提として、我々のチームで強風と荒波のメルボルンの海で主催者に迷惑を掛けずにレースできるか、無事に生きて帰れるのか、日本の恥と言われない程度のレースが出来るのか?
そもそも日本からの他のチームは全艇プロ、セミプロでパトロンが日頃育成しているチームで業界では知らぬ人がいない有名チームなんだそうである。


そんなわけで、ヨットシーズンも終わった11月から出発までの2ヶ月で1年分以上の練習をすることとなる、いかにも現場あわせの得意な我が社の社風を表している。


案の定、年明け早々最重要なコアメンバーの一人がすったもんだの挙句、仕事で行けなくなってしまった。最終練習とセール搬出目的で我マリーナにメンバーは集合したものの、ハーバーにいても練習も出来ず、宿で延々13時間の議論を展開。最終結論としては、危険防止のためM君の後輩を1人入れることとする。メンバー各員その日のレース出場について乗船前に安全を主眼に全員で意思決定する事を前提として(船の上ではスキッパー・艇長の言う事に従う)、遠征を決定。結果的にこの議論はきわめて重要であったと感じる。


メルボルンにて
1月12日といえば弊社中部の新年会その日の内に出発。弊社中部支社前に全員集合。見送る、今回行けないKB君、I君、H君がいかにも口惜しそうで見ていてたまらない。それでもジャンボタクシーで一路セントレアへ。チェックインカウンターで時間が掛かったこと。手荷物扱い別料金なしでセール4種類、ロープ各種、工具一式を通そうという算段で、結果何とか機内持ち込みでアディッションなしで交渉成立。


1月13日(金)
格安チケットなので香港で3時間も時間を潰し、17時間かけようやくメルボルン空港着。東京から先乗りのM君が出迎えてくれ、レンタカーの手配も済んでいてスムースな第一日かと思われたが、分乗して10分ぐらいで早2台はバラバラ。いかにも今回の自主性溢れる我々のチームの象徴的スタートであった。どうにかこうにか宿へバラバラに到着。


その日の内にハバーで我々が借りるオーナーとサンドリンガムヨットクラブ(今回の世界選手権のホストヨットクラブ)で落合う。彼はクラブの副会長のような人物で、陽気で気のいいオージージェントルマンと言った御仁。
K艇長はさすがにヨット業界知り合いが多く、ハーバーで遭遇した先輩で、「G号」という日本有数のチームのボスであるNさんに呼ばれ、メルボルンTM会へいってしまう。このバラバラ感では、先が思いやられる。
残ったチームメンバーはOZビーフを食べにサウスヤラ、チャペルストリートへ。340グラムを若手は軽く消化。脂身が無くスムースに胃に収まる。アルティメット・マルガリータの量・グラスの大きさにはたまげる。


1月14日(土)
陸で艤装。
M君の後輩でTヨット部のMM君が一人でハーバー迄バスや鉄道を乗り継いで到着。
中々気のいい奴で、彼を招聘して大正解と言う事が、日を追って分かってくる。


1月15日(日)
レンタル艇、艤装・チューンアップ後、クレーンで海面へ艇を下ろす。艇が傾き一瞬緊張感が走る。
さんざっぱし手を加え、その後、いよいよ練習開始。
その後、インヴィテーション・レースへ参戦。左のジブ用レールが折れた事と、スピン用のブロックが壊れ、試合途中でリタイア。なんという船だ!
前夜祭の会場で主催クラブであるサンドリンガムヨットクラブと我マリーナオーナーズクラブのバナー交換を行う。多分我マリーナとしてははじめての海外でのフラッグ交換と思われる。
※写真は、サンドリンガム・ヨットクラブハーバー。参加9ヵ国の国旗がはためく。
(明日に続く)